2011年7月15日

最低賃金の大幅アップ

2011年7月3日に行われた下院選挙(定数500議席)でタクシン元首相派のタイ貢献党(プアタイ党)が過半数を確保しました。

次期首相であるタクシン元首相の実妹であるインラック・チナワット氏(44)は選挙公約の一つである最低低賃金の1日300バーツへの引き上げを実行する構えです。

産業界・労働者・エコノミストからの論調は賛否が全く2つにわかれているようです。

現在タイのタイの最低賃金は今年1月から各都県で1日8―17バーツ引き上げられ、最も高い南部プーケット県で221バーツ、最も低い北部パヤオ県で159バーツになっています。

バンコクは215バーツですが、タイへの直接投資の40%を占める日本企業にとっても大きな問題です。

先日バンコク近郊の工業団地を視察した際のタイ人経営者の話によると、インセンティブとして法人税の引き下げを伴う政策があるので、体力のある大手企業は実施していくのではないかと話をしていましたが、一律300バーツへのアップは難しいだろうとのことです。

タイは2006年のクーデターにより、タクシン政権が失脚後もタイ経済は比較的力強い成長を続けてきましたが、成長の恩恵を受けた都市部のエリート層と農村部の貧困層という2極化が国内の政治情勢を不安定なものにしてきた面があります。

また新政権が公約に掲げているものには下記のものがあります。

①大卒者の最低月給を15000バーツ(約43000円)
②全ての小学生へのタブレット型コンピュータの配布 
③公共の場所(教育機関、観光地、病院など)での無料の無線インターネット 
④バンコクとスワンナプーム空港を結ぶ鉄道「エアポートリンク」の東部パタヤ市までの延長 
⑤バンコクと北部チェンマイ、東北部ナコンラチャシマ、東部ラヨンなどを結ぶ高速鉄道網整備 
⑥バンコク首都圏の電車10路線建設。運賃は全線一律20バーツ

新政権が反タクシン派からの政治的リスクと公約を実施した場合の財政悪化というリスクにどう対応していくのか注視していく必要があります。