2010年10月6日

企業の海外脱出をどう止める

日本はアジア諸国に比べて重い税負担や厳しい労働規制がある中で、企業活動を行っていますが、韓国・中国・台湾・インド企業などとのグローバル競争の中で、海外に工場を移しているニュースを頻繁に見ていると、政府の政策はそれを止めようともせず、この20年政治家は何をしているのだろうと思います。

失われた20年と言われている中で、政府の責任は大きく、今後10年で多くの問題が出てくるのは、容易に予見されます。

民主党の枝野氏が尖閣諸島の中国漁船問題が発生して、[中国進出は企業の自己責任]という発言がありましたが、政治家は何もしないというメッセージなのかも知れません。

国会では政治家の人数を削減していくという論議がなされているようですが、削減分の国会議員を国際議員というような形で、アジア諸国をはじめとした地域に常駐させて、アジアの動きを生で体験させることが彼らの頭をブラッシュアップさせることでしょう。

さて、タイ国内のニュースを見ていると、自動車産業をはじめ多くの製造業がタイへ進出してきています。

今年度のタイ投資委員会の統計を見ていても、日本企業の投資金額・投資件数ともにNO.1です。

以下、最近のニュースからの抜粋です。

円高下で、日本の自動車メーカーがタイへの生産投資を急加速している。世界への輸出拠点としての期待から、国内とは対照的に大型投資が相次いでいます。


  • 日産自動車が新型「マーチ」をタイから日本に逆輸入し始めたことは有名ですが、それは氷山の一角にすぎません。
  • 8月26日、マツダは米フォード・モーターとの合弁会社、オートアライアンス・タイランド(AAT)に、3億5000万ドル(約300億円)を投資すると発表しています。2011年半ばから次世代ピックアップトラックの生産を始めるそうです。

  • マツダは昨年7月にもタイで最新鋭の乗用車工場を稼働させており、既にAATで「マツダ2(日本名デミオ)」と兄弟車の「フォード・フィエスタ」を生産している。道路事情が悪い新興国では、ピックアップトラックの需要も高いことから、新規投資を決めたようです。
  • 「タイは国内市場が好調なだけでなく、輸出拠点としても魅力的。工場の稼働から10年以上が経ち、技術レベルも高まっている。追加投資のチャンスをずっと探っていた」(マツダの古賀亮・執行役員)

  • 三菱自動車も2011年度に投入を予定する排気量1000~1200cc程度の世界戦略車をタイで生産する。約400億円を投じ、年間20万台の生産能力を倍増させる計画です。

  • 最先端のエコカーを現地で生産する動きさえある。トヨタ自動車はハイブリッド車「プリウス」の生産を年内にもタイで開始・輸出する見込みです。



完成車メーカーの現地生産が拡大すれば、自然な流れとして、部品メーカーも投資を積極化する。

  • ブリヂストンは、タイやインドネシアにおける生産投資を急ぐ。2010年末までに、タイの生産能力を2割、インドネシアの生産能力を5割増やす計画。

タイでの自動車生産の拡大は予想以上だ。追加投資を検討中で、今年秋までに詳細を固めたい」と、ブリヂストンの荒川詔四社長は意欲的だ。

  • ベアリング大手のミネベアなど、様々な部品メーカーの大型投資が目白押しになっている。



 猛烈な勢いで進むタイへの投資の背景には何があるのか

急激な円高への対応が一番の狙いであるのは言うまでもありませんが、国内生産のコスト競争力は低下しており、自動車メーカーは日本に代わる輸出拠点の確保に動いている。

日本メーカーは中国、インド、ブラジルなどへの投資にも熱心だが、それらはあくまで現地市場での販売拡大に主眼を置いている。

一方、人口が6000万人強と市場規模が小さいタイへの投資は、世界各国への輸出が前提だ。

従来、日本の完成車メーカーは、海外での需要の増減には、日本の工場からの輸出を中心に対応してきた。しかし日本の役割を代替する条件が、タイで整いつつある。

とりわけ、タイ政府による優遇策が、投資の呼び水となっています。

タイ政府は自動車を現地生産する際に、税の減免など様々な優遇措置を用意している。その代表格が「エコカー・プロジェクト」だ。ガソリン1リットルで20km以上走る排気量1300cc以下の小型車を生産する場合、実に8年間という長期にわたって、法人税と機械輸入税が免除される。

「投資額は50億バーツ(約135億円)以上」「エンジンの主要部品はタイ製を使う」「5年以内に年間10万台以上を生産する」などハードルはありますが、リターンは大きいと考えて、多くの自動車メーカーは投資を決断しています。


既に触れた技術の蓄積も予想以上です。

日本メーカーは1980年代からタイに進出しており、今では熟練した生産技術者が育っています。さらにトヨタ、日産、ホンダなど主要メーカーは現地に開発拠点を設けており、技術者を養成しています。

タイ政府のFTA推進が後押し

「タイの設計会社は、急速に実力をつけている。欧米の技術者には英語しか話せない人が多いが、タイ人は日本語を熱心に学んでおり、日本人技術者とコミュニケーションする能力が極めて高い」。トヨタで生産を担当する新美篤志・副社長はこう評価しています。

日産でも新型マーチなどの開発に、タイのテクニカルセンターで雇用するタイ人の技術者が活躍している。「日本人や他のアジア地域の技術者と協力しながら、開発の極めて重要な部分を担うようになった」(日産の役員)。

部品メーカーも地力をつけている。鋳造品、樹脂成型品、エンジン関連など多くの部品は、現地で調達できる。日産やホンダでは部品の現地調達率が既に9割程度に達しているほどです。

「タイはアジアのデトロイトになった。自動車産業が集中しており、海外のほかの地域と比べて生産拠点としての魅力が高い」と言うのは、三菱自動車の黒井義博・執行役員だ。バンコクを中心とする狭い地域に、自動車関連の企業が集中的に立地していることは、物流面でも有利になる。

もう1つ見逃せない強みがある。タイ政府が、貿易相手国との間で関税を撤廃するFTA(自由貿易協定)の推進に熱心なことだ。

自動車販売が急拡大している東南アジアはもとより、オーストラリアなどともFTAを締結。インドとも交渉中で、自動車部品や電子部品など80以上の品目で、先行的に関税を引き下げている。東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国としては、中国、韓国ともFTAを結んだ。

FTAはタイから完成車や部品を輸出する際に有利に働きます。日本から輸出すると関税がかかる国でも、タイから輸出すれば無税になるケースがある。


上記のような動きは、日本がこれからどうなるかのメッセージのひとつだと思います。